東京高等裁判所 昭和50年(う)980号 判決
被告人 仲村こと磯村健一
〔抄 録〕
そこで、原判決を検討すると、所論指摘のように原判決は、その主文において、「実包一一発」を没収するとし、その理由として、罪となるべき事実は、そのうち、試射された「実包」七発の所持を不法所持と認めながら、適条において、同七発については刑法第一九条第一項第一号、第二項により、右不法所持に含まれない「不発の四発」については同法第一九条第一項第二号、第二項によりそれぞれ没収すべきものと説示して、合計「実包一一発」を没収すると判示していることが明らかである。
ところで、没収は、附加刑であって、その言い渡しをするには、主刑の存在を前提としなければならないことは刑法第九条、第一九条に照らし明らかなところ、本件罪となるべき事実は、原判示の「回転式改造けん銃一丁及び試射された火工品である二二口径ロングライフル型実包七発」の不法所持であって、所論指摘の「不発の四発」の所持が、本件公訴事実の対象になっていないことは、本件起訴状記載の公訴事実及び原判示の罪となるべき事実の記載に照らし明らかであり、記録によれば、右「不発の四発」は、不発の原因がなへんにあるか必ずしも明らかでないけれども、弾丸としての機能を有しないものであることが認められるので、意識的に本件公訴事実の対象から除外したものであることが看取され、したがって、原判決もその四発の所持については主刑の言い渡しをしていないことが認められるのみならず、没収物件が刑法第一九条第一項各号に当たるかどうかはその刑の科せられる犯罪の性質いかんにより定まるものと解すべきところ、本件事案は、けん銃及び実包の不法所持であって、記録によれば、被告人は、すでに「不発の四発」をも所持していたものであることが認められるものの、その「四発」が本件不法所持の組成物件に当たらないことは右認定に照らし明らかであり、又、被告人はすでにこれを所持しているのであるから、右所持をもって、所持罪の行為に「供し」若しくは「供せんとしたる」ものというのはそれ自体矛盾といわなければならず、本件七発の実包の不法所持行為に供し若しくは供しようとしたということはできないから、いずれにしても実包の「不発の四発」は没収すべきではないのに、これを刑法第一九条第一項第二号、第二項により没収した原判決は、同条号の適用を誤ったものというのほかはなく、その誤りは判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、その余の控訴趣意を判断するまでもなく、原判決はこの点において破棄を免れない。
(瀬下 金子 小林眞)